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咬合と噛みあわせ


この項目から3) のDDSまでは、今話題の咬合の話になります。
我々がテーマとしてきたDDSと言う考え方は別のページでも述べましたように、ハンス・セリエ博士の「ストレス学説」が基本となって発展してきたものです。
現代の社会状況の変化は改めて「ストレスと人間」との関係に多くの問題を投げかけているように思われます。そして、我々はセリエ博士の細い支流ではありますが、ストレス学説の流れの中に身をおけたことに感謝したいと思います。今、時代は改めて色々な意味でのストレスを見つめなおす必要あるようです。

これからのお話は、我々の基本的なテーマであり考え方であるDDSにつながる流れの中でのお話を、用語などの意味を含めて色々と分けて進めてゆきたいと思います。
顎関節症や従来の咬合の考え方などは、インターネットや雑誌などで紹介されており、ここで改めてお話する必要はないと思いますので、視点を少し変えたお話をしてみたいと思います。

まず、「咬合」「噛みあわせ」の言葉が氾濫しています。どちらがどうなのか、世界的にもこの言葉の定義や違いなどはまだ確立されているものでもありませんが、便宜上、我々はこの二つの言葉を分けて定義しておきたいと思います。 「噛みあわせ」は上下の歯の関係、そして咬合は頭蓋における下顎と上顎の関係ということにします。この二つは密接に関係しているのですが、分けて考えるほうがわかりやすいようです。

歯と歯の関係が噛みあわせ 頭蓋における下顎との関係が咬合

これまでの当医院でのHPには咬合位と骨格筋系の関係についての症例などを載せてきましたが、最近はそのような紹介が多く見られるようになりましたので、省略しても問題はないように思います。
顎位=咬合に関しては様々な意見があります。意見は集約される方向にありますが、それは河村先生の語られた機能的正常咬合に近いものになるのでしょう。
しかし、機能的正常咬合にいたる道筋が大変難しく、筋運動や筋電位を計測することもひとつの方法でしょうし、Oリングテストのような心理的要素を利用した治療法も一つといえるでしょう。
顎位の計測に対してそして言い換えれば骨格筋バランスが基本となる疾病に対しては機能的な正常咬合に導いてやれば回復することになるでしょう。
(注意すべき点は、顎位、言い換えれば咬合が額口腔系のすべてではないという点です。咬合力や感覚などが大きな要素であることも頭に入れておく必要があります。このことは大変重要な視点であり、現在あまりにも顎位=物理的視点での顎口腔系へのアプローチが多すぎるように思います。顎口腔系と全身との関連に出会い25年、今このことに反省しています。あまりにも視点が狭すぎたようです。)
ここで問題となるのは顎位を3デイメンション、三次元的に見ることであり、ともすれば2次元的な対応を行いがちで、なかなか改善しない場合が見られますが、それさえ適切に処理すれば問題はないと言うことになるでしょう。

このような咬合でお顔の感じは
骨格ではこのように左右と前後そして上下に偏位と回転をします。

顎位を変える場合、3次元での変化を起こさせなければならなくなります。
多く見られるのが左右だけの偏位を見てしまい、回転していることを見失うことでしょう。顎位での治療が可能な症例においてもこの回転には注意が必要です。
咬合挙上だけで、解決しない場合、この回転を見過ごしていることが少なくありません。顎位での治療が可能な症例においては、解剖学上咬合挙上だけで比較的治癒することのほうが多いのですが、回転にも注意をしておくことは必要でしょう。
書きすぎる咬合論、さまざまな計測器での咬合計測においてもですがこの回転を置き去りにしていることが多いようです。

どのような咬合位が一つの理想型なのかを求めることも一方では必要になります。
    25年前、ケーシー・グゼイと出会い「クオダラントセオレム」と言う独特の咬合理論を学んだわけですが、この理論は実際の臨床では大変使いにくいものであることは確かでした。本来この考えは総義歯での咬合を考えたものであり、彼がフォンダーとの出会いの中で、全身との関係に適応できることを発見したといういきさつがあり、通常の臨床では大変使いにくい理論と言うのが本音です。しかし、月日がたってみると、なるほどと思わせることが多く、ここで明確には申し上げれませんが、この「クオダラントセオレム」が顎位置と言うテーマにおける咬合論としては正解なのではないだろうかと思っています。しかし、この咬合理論を実際に臨床で使うには、独特の手法が必要であり、単に咬合を挙げるというものではないことだけをここでは申しそえておきたいと思います。
   では少し視点を変えると、顎位置はどれほど変化させることが可能なのかと言うことについて考えて見たいと思います。

   このことが次項の「顎関節症」にも関連してくることになります。
   しかしこの意味は単に下顎頭の動きだけを見ていると話が動かなくなるんですが、下顎全体と頭蓋の関係を基本として、関節窩と顆頭との関係を考えることになります。もう一つの要素としては、顆頭の形態的な違いも下顎骨の成長を参考にして考察してゆく必要が生じます。同時に解剖学的な考察においては3デイメンション的な見方が必要不可欠になります。
顎関節の挙上を考える場合、顎関節症をターゲットにすると、顎関節症に異なる経路による他の問題が生じてくることが多く、純粋に顎関節の考察が難しくなるので顎位の変更を美的な治療面から見てゆくことにします。

この治療の目的は、フェイスラインの改善でした。フェイスラインを改善するのは顎位の移動である程度までは可能です。極端な改善は美容整形的な手術が必要になります。

初診時
臼歯部での咬合高径を挙上する。  
数ヶ月でこのような変化を見せます
左右的な偏位はまだ触っていません。
この症例では約2ヵ月後です。
そして患者さんの要望によりもう少し挙上してゆきます。
ただ挙上の場所が変わります。

この症例では、矯正治療に平行し大臼歯部での挙上を繰り返しています。
咬合高径の挙上により下顎の前後的回転が起こります。
そして顎位の変化になります。(当たり前といえば当たり前ですが)
*顎位を挙上させる治療を行う場合、前歯部の取り扱いが難しくなります。
同時にマウスピースなどの咬合挙上により

  1. 全歯牙をマウスピースで覆う場合、形態によっては歯牙の沈下を生じさせることがある。
  2. 臼歯部のみの挙上では前歯の回転が生じる場合と生じない場合がある。  これは個人差があり、どの歯牙を挙上させればどのように下顎が回転するのかを読む必要があります。  咬合の挙上により回転が行われない場合、下顎位が前方に移動して、挙上を行うことにより解決するトラブルとは異なるトラブルを生じることがあります。
  3. 咬合治療において、徐々に咬合高径を変えて機能的な正常咬合を求める場合があります。この治療の場合は、ステップを時間的に観察してゆくことが重要です。  
    ある一定の時間内での処置を行わねばなりません。  
    この方法での成果は比較的多く見られます。この方法の過程はある意味なんでもいいというとしかられますが、機能的な正常咬合を求めることが目的ですので、
    1) 計測装置や経験で徐々に補綴的に変化さす方法
    2) Oリングなどのような方法で心理面から求める方法
    3) カイロプラスティックのように全身の骨格系の調整から求める方法

等が行われています。

われわれは審美面のアプローチを行いますが、考え方としては同じことになります。
咬合高径は臼歯部で5ミリ以内の挙上では顎関節に異常を起こす場合が多いと思い込んでいたのですが、この場合臼歯部では2ミリ程度の挙上を繰り返しながら、フェイスラインの変更を行っています。
この症例から、ある程度の咬合位の挙上が問題なく同時にそれは個人差があること
その個人差を予測するいくつかのポントがあり、それをクリアーできるかどうか、同時にそれをクリアーできない場合はなぜなのかを求めてゆくことが道順になります。
この道順が、次項での顎関節症の慢性状態における治療法につながるといえます。
咬合の件を長々と述べてきましたが、ここで噛みあわせを見てみたいと思います。
咬合はここでは上記で定義したように歯と歯の噛みあわせとしています。この噛み合せが
咬合力ベクトルの問題になります。
噛み合せが基本的には咬合を決定します。かみ合わせは歯と歯の関係です。

  1. 歯軸
  2. 咬合面形態
  3. 萌出度合い及び萌出位置      の3つが基本的要素となります。

歯列の完成と共に咬合ベクトルが平衡をとり、力が加わっても通常は歯牙の移動はありません。過剰な力は咬耗が吸収し、咬合面形態を変化させることになります。しかし、平衡が狂うと歯牙の移動が起こり始めます。矯正治療はこの平衡を狂わして移動をするといえます。
この平衡は、歯周病・顎関節症・矯正治療後の後戻りなどにも関係してきます。
歯周病はその病変進行は感染症であることは間違いのないところですが、感染論で片付けるにはこの力が抜け落ちています。また後の項で延べたいと思いますが、歯周病における多くの研究報告が白か黒かを求めすぎていることから生じているように思われます。
臨床的には咬合力による歯周病が(咬合性外傷とは少し違うのでしょうが)多くを占めることを体験します。ここでは本題とは違うので別の項で考察します。
さて、噛みあわせは咬合の基本となります。故に切り離して考えるわけにはいかないのですが、一緒にしてしまうわけにもいきません。この二つを一緒にしてしまうことから、色々な誤解が生じているようです。
噛みあわせはあくまでも歯牙と歯牙との関係と絞ってみると、問題が整理しやすくなってくることになります。例えば矯正の咬合論について考えてみることにしましょう。

矯正治療では臨床的な正常咬合の基準を「アングル」の分類に置くようです。歯牙と歯牙との関係を見ていると、19世紀も後半時期のこの考え方には確かにすばらしいこと気づきます。歯牙関係を考察する場合、今でもこの基準が正解でしょう。ただ100年の年月は顎と頭蓋の関係を見る必要性へと進歩してきました。例えば、「アングルの3級」という咬合を見てみましょう。俗にいう反対咬合、下顎が上顎よりも前にある咬合です。

図@ 図A 図B

この咬合形態を、下顎と頭蓋の関係で見ると

  1. 下顎位自体が前方にある反対咬合  図@
  2. 下顎前歯が上顎歯槽骨の成長を阻害したために生じた反対咬合  図A
  3. 骨の過成長による反対咬合  図B

の3つに分かれます。その上で、顆頭・下顎角等の形態を考慮しなければなりません。
そして前後的な問題のみならず、顎位の左右的な偏位とそれ以上に重要なのは下顎位の回転です。3デイメンションによる判断基準です。
これだけではなくこの骨格系に加えて、筋肉、それに関係する下顎の開閉様式が問題となります。そして歯牙自体にも考察がなされなければなりません。歯軸、萌出です。

100年の時間は多くのファクターを生み出しました。
同じ咬合を触る歯医者さんでも、矯正の専門医、補綴咬合学を専門とする人、そして我々のようにストレス屋がいます。同じ矯正治療を行うとしても、矯正専門医と我々とは考え方が違う場合も少なくはありません。
矯正で言う後戻りと言う話があります。後でこのことについても少しお話をすることにはなります。これも考え方に違いがあります。顎外装置の使用では意見は大幅に異なります。
出発点が違うと同じ矯正治療でも多くのことが違ってきます。面白くもありますが、患者サイドでは困惑されることにもなります。
インターネットのある掲示板に「4番の抜歯による矯正治療後の身体状態の不調について」の話がありました。後で「抜歯か非抜歯か」の項で詳しくお話をしたいと思いますが、これに対する考え方もまた異なってきます。
取り留めのない話が続きましたが、最後に少し整理をしておきましょう。

  1. 咬合と噛みあわせは分けて考えるほうがわかりやすい。
  2. 但し、咬合を決定する大きな要因はかみ合わせである
  3. 咬合や噛みあわせを見る場合、多方面から考察しなければならない。

と言うことになります。

咬合とかかみあわせについては多くの意見があります。色々な意見を参考にして考察することが必要だといえます。例えば、長く地道で確実な研究を続けてこられた、面識はありませんが続肇彦先生の「咬合 このかわりゆくもの」を初めとする多くの書物や学生時代の恩師の一人である丹羽克味先生の「ベクトル咬合論」等は、多少の意見の違いがあるとしても、大変有意義で参考となる図書でしょう。